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荒廃森林の抽出技術

長崎県島原半島における適用事例


図3 荒廃林抽出指標図
我が国は国土の3分の2が森林に覆われており、森林を健全な状態に保つことは国土マネジメントの観点からきわめて重要な課題です。加えて生物多様性保全の核として、また二酸化炭素吸収源として、近年の地球規模の環境問題に対する我が国の対応の鍵が森林に求められています。一方で、社会経済的な要因から森林の手入れが行われず、林床が暗くなって下層植生が減少・消失するなどの荒廃した森林が各地でみられ、その対応が課題となっています。 ここでは、「雲仙岳航空レーザ計測を用いた里山砂防事業検討業務」における結果をもとに、島原半島全域(約480㎞2)という国内では前例のない広さの森林を対象として、航空レーザ計測データの解析によって荒廃森林の抽出を試みた実践的な取り組みを紹介します。

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航空レーザ計測データの解析による荒廃森林の抽出指標とした反射パルスの特性


航空機から照射されたレーザは、地表面だけでなく樹木の表面や林内の低木からも反射するなど、複数種類の反射パルスが存在します。一般に荒廃した森林では立木密度が過密で林内の下層植生が乏しくなる傾向があることから、適度な立木密度と豊かな下層植生をもつ良好な森林とは反射パルス特性が異なるものと考えられます。

森林の林冠付近(上層)における反射パルスの分布は、立木が過密なほどその幅が小さくなると考えられ、また、レーザは過密な林冠を透過しにくくなることから、「①林冠反射パルスの分布」、「②下層到達率(レーザ照射数に対して下層まで到達したパルスの割合)」を立木の過密度合いの指標としました。また、下層植生の存在の有無によって「林床付近(下層)の反射パルス」の分布特性が異なると考えられることから、「③下層反射パルスの分布」を下層植生の繁茂状況の指標としました。(図1)

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針葉樹林を対象とした荒廃林の抽出


解析の対象とした針葉樹林のうち、ヒノキ林の多くは森林の林冠部をレーザが透過しにくく、下層到達率が10%未満であることがわかりました。そこで「下層到達率10%」を閾値としてスギ林とヒノキ林を区分し、ヒノキ林では「①林冠反射パルスの分布」、「②下層到達率」を指標値として、スギ林ではこれに「③下層到達パルスの分布」を加え、これらの指標値を正規化した上で面的に展開し、広域の針葉樹林に対する「荒廃林抽出指標図」としました。(図2、3、4)

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今後の取り組み

広域の森林域において荒廃森林を効率的に抽出する技術は、適切な森林管理を低コストで実現する上で、今まさに求められている技術といえます。今後は、検証事例の積み重ねによって荒廃林の抽出精度を向上させ、森林域における環境保全に寄与できる技術として確立していきたいと考えています。

図4 荒廃林抽出指標図と反射パルス断面、現地状況との対応

図4 荒廃林抽出指標図と反射パルス断面、現地状況との対応


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