森林・環境
航空レーザ計測による森林資源解析と森林計画への応用<事例紹介>
現況把握から計画までの総合支援を目指して

図1 レーザ計測によるDEMとDSMの取得
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佐賀県全域における森林レーザ解析と森林簿データの更新
森林域をレーザ計測すると、図1に示すような地面のデータであるDEM(数値標高モデル)と樹冠部のデータであるDSM(数値地表モデル)を取得できます。
佐賀県ではレーザ計測結果から樹頂点を抽出し、樹高・樹冠長・胸高直径(樹冠面積より推定)などの計測を行いました。その後、得られたデータから森林の密度の指標である収量比数や森林を構成する樹木のバイオマス量を示す材積等を算定しました。それらの結果を小班ごとに集計し、森林簿更新のためのデータを作成しました(図2)。
これらの解析結果を検証するため約250地点で現地調査を行った結果、樹木本数や樹高など、高い精度で計測できました。このような手法で県全域の森林域において一律に解析を行い、その結果を森林管理の基本的な情報である森林GISに追加した例は全国でも初めてのことです。データを整備した結果、林小班単位、市町村単位での森林情報の集計や色分け図面作成が容易に行えるようになりました。
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森林レーザ解析結果をもとにした森林ゾーニング
平成23年に変更された森林・林業基本計画において、これまでの森林ゾーニングは廃止され、各地域に応じた森林の機能に着目し、新たな森林ゾーニングを各自治体が作成することが定められました。
佐賀県では森林の機能から「森林保全ゾーン」と「林業振興ゾーン」の2種類のゾーンを指定することとしました(図3)。森林ゾーニングは、既存のデータに加えて森林レーザ解析結果を用い、森林計画策定の基本単位である林班ごとに行いました(図4)。
この方法を用いることで、客観的な視点から同じ条件で広範囲のゾーニングができ、結果を森林GISに反映することにより、市町村単位での各ゾーンの面積集計が容易となりました。
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治山計画・路網計画への地形データの活用
今後森林整備を推進していくにあたって、路網の整備が重要です。路網設計に際して、現存の路網の状況を把握し、地形や間伐を必要とする個所の有無など、各種条件を確認する必要があります。航空レーザ計測により得られる等高線や赤色立体地図などの精細な地形データは、路網計画策定にあたっての基礎資料として有効であるほか、治山計画の策定にも活用可能です。
地形データを活用し、PC上で予備的な設計を行えるよう、治山計画・路網計画支援システムを作成しました(図5)。システムの普及を図るため、データ閲覧機能を単純化し、設定したルートの縦横断図出力の自動化を行いました。
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今後の展開
今後は、森林組合などの事業体が個別に立案する間伐計画などの事業場面における応用へ期待が高まっています。
そのため、より詳細な計画立案にも活用可能なデータを提供するため、さらに解析精度を高め、森林GIS が森林管理の現場で最大限に活用されることを目指しています。
アジア航測では、最新の計測技術による森林情報の把握から、森林整備や治山・林道の計画立案まで、森林に関する総合的なコンサルティングを行っていきます。
図4 森林ゾーニング結果
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