森林・環境
ミャンマーにおける森林減少防止への取り組み支援
アジア最後のフロンティアでアジア航測ができること
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はじめに
日本は、国土の約2/3が森林に覆われた、世界でも有数の森林国で、かつ森林資源の蓄積量は年々増加しています。しかし、国連食糧農業機関(FAO)の「世界森林資源評価2010」によると世界の森林面積は現在でも年間520万ha(日本の国土面積の14%)のペースで減少しつつあり、とくに中南米やアフリカ、東南アジアなどの国々では熱帯林の大規模な消失が続いています。熱帯林は二酸化炭素の吸収源であると同時に、多種多様な生物の棲み処ともなる貴重な環境です。地球規模での気候変動や生物多様性の劣化を防ぐため、各国政府のみならず民間セクターに至るまで、さまざまな主体の参画による対応が求められています。
このような情勢の中、アジア航測は林野庁が公募した「森林減少防止のための途上国取組支援事業」の補助を受け、2009年度から3ヶ年にわたり、ラオス人民民主共和国を対象に森林減少・劣化防止のための技術支援や人材育成活動を実施してきました。この経験を東南アジアの他国にも展開すべく、2012年度からはミャンマー連邦共和国にフィールドを移し、同国の森林保全を支援する活動を行っています。本稿ではその取り組みの概要を紹介します。
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ミャンマーの現状とREDDプラス
ミャンマーの国土は、北は中国チベット自治区に境を接する最高峰カカボラジ(標高5,881m)から南はアンダマン海に面するマレー半島の中ほどまで広がり、その面積は日本の約1.8倍に及びます。
写真1:上から 旧都ヤンゴン、ヤンゴンから首都ネピドーへ続くハイウェイ、環境保全林業省正面
FAOの資料によれば、1975年時点ではこの広大なミャンマー全土の6割以上を覆っていた森林が2010年には過半を割り込み、面積だけでなく質の劣化も進んでいることが報告されています。現在でも年間の森林減少面積は30万haにも上り、インドシナ諸国の中でも際立った値を示しています。
昨今さまざまに報道されているとおり、ミャンマーでは2011年の民政移管後、民主化への動きが急加速し、人口規模や豊富な天然資源などへの期待から「アジア最後のフロンティア」と呼ばれ、先進各国がこぞって支援に乗り出しています。
森林・林業分野では、地球温暖化防止のための有力な対策と目されるREDDプラス(国連気候変動枠組条約締約国会議により推進されつつある「森林減少・劣化によるCO2排出の削減、森林保全、持続可能な森林管理、森林炭素蓄積の増強」)への参画を促すために、国連機関がノルウェーの資金協力を得てミャンマーでの枠組みづくりに着手しています。また、乾燥地への植林プロジェクトを行っていた韓国が、REDDプラスへの対応も含めた支援メニューを打ち出しています。こうした中、アジア航測はミャンマー環境保全林業省・森林局をカウンターパート機関とし、REDDプラスへの取り組み体制を技術面・人材育成面から支援する活動に着手しました。
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支援活動の枠組みと実施状況
平成24年度の活動はミャンマーにおけるREDDプラス推進上の技術的な課題に焦点を当て、国土全体、準国レベル、プロジェクトレベルの各スケールで技術開発と人材育成に取り組みました。具体的には高頻度観測衛星の画像解析による国土全体の森林モニタリングとそのトレンドをふまえた将来予測(図1左)、ミャンマー東部・シャン州のインレー湖流域に定めたパイロットエリアにおける森林炭素蓄積量の推定(図1右)などの解析を当社が行いました。また解析手法や結果を共有するため、カウンターパートと共同でテクニカルセミナーやワークショップを開催しました。
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技術研修の実施
一方で、国土の広大さに対応するためには更なる人材育成が必要と森林局は認識しており、事業内容のうち当社からの技術移転部分に対して大きく期待しています。前述のワークショップに加え、実技指導も含んだリモートセンシング技術研修(図2右)、日本へ職員を招聘しての本邦研修、現地調査時のOJT、コミュニティフォレストリーを対象とした住民参加型の森林モニタリングに関する研修(図2左)なども行いました。今後の継続的な支援が森林局より切望されています。
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おわりに
ミャンマーでは輸出品目に占める木材、とりわけチーク材の位置付けが大きく、長く続いた軍事政権下での外貨獲得手段として、積極的な森林資源開発が行われたと言われています。しかし、2014年からチーク原木丸太の輸出規制が決まり、森林保全政策が具体的に進められつつあります。
今後は資源としてだけでなく、より広範な環境保全の観点からも森林減少劣化防止のための支援が求められるところです。
アジア航測は環境先進企業として地球環境保全に取り組むため「エコ・ファーストの約束」を掲げています。ミャンマーでの森林減少劣化防止への取り組み支援活動はその一環であり、本事業を通じて同国におけるREDDプラスの推進のみならず、持続的森林管理・生物多様性の保全に貢献していきたいと考えています。
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