航空・計測
ヘリレーザとMMSの融合
高密度点群データの利活用
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はじめに
近年、ヘリコプターからの航空レーザおよびMMS(モービルマッピングシステム)の高密度なレーザデータが着目されています。特にアジア航測が導入した車載型のGeoMaster NEO®は国内最高性能を誇り、900点/㎡の高密度なデータを取得できます。そのため、密度が1点/㎡~10点/㎡程度の航空レーザでは不明瞭な標識や架線なども、はっきりと見て取れます。一方、GeoMasterNEO®の計測範囲は周囲約100mであることから、道路周辺の長大なのり面など、撮影位置から離れている地形や構造物を取得したい場合に、全ての範囲をカバーできない欠点もありました。航空レーザとMMSのデータの融合により道路付近だけではなく、道路斜面全体や巨大な構造物なども把握できるようになります。ここでは名神高速道路の天王山地区とお台場地区の事例を紹介します。
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斜面防災への適用
図1は、名神高速道路の天王山トンネル西側坑口付近の0.5mDEMから作成した微地形判読図です。ヘリコプターから取得した高密度なデータを使用することで、微地形の判読精度が上がり、沢部に設置された砂防ダム群や山みちなどを明確に識別できます。本図から、対象範囲内に多くの崩壊地形や地すべり地形があることがわかります。それらの不安定な土砂に対して渓流には多くの堰堤が配置されて、下流側への土砂移動の防止措置が図られていることも見受けられます。
天王山トンネル付近には近畿圏の第一級活断層である有馬高槻構造線が走っていますが、本図から構造線に付随する平行リニアメント(断層などの存在が示唆される直線的な地形)が見られ、リニアメントに沿って崩壊や地すべりが発生していることもわかります。このように詳細なDEMからの微地形判読により、多くの情報を正確に得ることができ、防災を図る上で極めて有効な手法であるといえます。
空からのデータ取得では、道路施設の設置されている沿道付近のデータ取得密度が粗になることがあり、道路面からデータ取得を行うMMSとの融合が大きなメリットを生みます。図2は高密度なLPデータとMMSの計測データを融合させた点群データおよび断面図です。本図から土砂が道路へ到達する際の道路脇の植生状況や擁壁の形状など沿道施設データを明確に取得できていることがわかります。道路の安全性の判断は、斜面形状と沿道の詳細な状況が把握されて初めて可能となります。道路に係わる全体の詳細なデータを短時間で取得できる本手法は、平常時だけでなく、逼迫した災害時にも道路の被災度判定を平常時データとの差分により高精度に行う手法として有効です。
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土木構造物の把握
図3はお台場のレインボーブリッジの外観であり、図4はその断面図です。上空から見える上部構造と側面部をヘリレーザで取得し、下部構造をMMSで取得しています。MMSではヘリレーザより高密度にデータを取得できます。そのため下部構造のフレームなどは詳細な形状まではっきりと見て取れます。
MMSが通った車道を中心に、両端の歩道や中心の新交通システムゆりかもめの軌道部分もデータが取得されていることが確認できます。このような断面図の作成や分類別の色分け表示はアジア航測の開発したLaserMap®Viewerによって簡単に行えます。
都市域では上空だけではなく、地下部も車道や地下鉄などのトンネルが複雑に交差しており、工事を行う際には周辺構造物の正確な三次元位置を把握することが重要です。MMSでは衛星測位システムと慣性計測装置を搭載しているため、トンネル内部においても正確な位置情報をもったレーザデータを取得できます。
図5は海底を通る首都高速湾岸線の三次元形状を示しています。レーザデータにより道路面の勾配や地上空間との関係を容易に表現し、計測できます。
このようにヘリレーザデータとMMSデータを使用することで、従来は再現の難しかった都市の大型土木構造物の正確な位置と詳細な形状を取得できるようになってきました。航空レーザとMMSによる融合データは、死角の少ない情報となり、道路施設の管理など多方面での活用が期待されます。
図3 レインボーブリッジの外観
図4 レインボーブリッジの断面図
図5 トンネルの三次元形状
おわりに
ヘリコプターとMMSにより、路面から離れた上方斜面、複雑な土木構造物の細部に至るまでレーザデータを取得できます。異なるプラットフォームで取得した高密度なレーザデータを融合することで、赤色立体地図やLaserMap®Viewerにより三次元空間をより分かりやすく表現できます。アジア航測は、レーザデータの取得と加工・応用技術により、斜面防災や設計業務への一層の貢献に努めます。
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