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ヘリコプターを用いた航空レーザ計測による土砂移動状況の把握 <事例報告>
2010年7月16日広島県庄原市で発生した土砂災害
空中写真および航空レーザ計測成果から判読した土砂移動状況図
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災害の概要
広島県では6月下旬から停滞した梅雨前線による雨が降り続いており、災害現場の近隣に設置されていた大戸雨量計では7月1日から16日までの累積雨量が267 ㎜ に達していました。そこに、3時間の累積雨量173㎜、最大時間雨量72㎜、最大60分雨量91㎜の集中豪雨が発生したのです。
広島県の発表によると、庄原市における被害状況は死者1名、負傷者1名、住宅被害22棟(全半壊、その他)となっています。今回の災害では土石流の発生が37箇所、崖崩れの発生が5箇所でした。
アジア航測が撮影した斜め写真と航空レーザ計測時に撮影した写真から、土砂移動の状況を判読したところ、今回最も被害が大きかった篠堂地区では、いたる所で斜面崩壊が発生し(表層崩壊が多数発生し、土石流化して篠堂川に流出)、崩壊総面積は約1.4㎞²、崩壊面積率は約4.2%となりました。
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航空レーザ計測による土砂移動実態の把握
今回の災害で最も崩壊・土砂流出が著しかった篠堂地区と先大戸地区を対象に、航空レーザ計測による土砂移動状況の把握を行いました。これらの地区では、狭い範囲に表層崩壊が集中して発生しました。多くの表層崩壊には、色の明るい部分と暗い部分があり、このうち明るい部分がこの地域の基盤である流紋岩の風化岩が露出した崩壊発生域を、暗い部分がこの地域に広く分布しているクロボクの表面が洗われて残った流送域を示しています。(表層崩壊が多数発生し、土石流化して篠堂川に流出)
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土砂変動状況
3.1 篠堂地区における土砂変動状況
篠堂地区は、急峻な斜面に囲まれた篠堂川流域の谷底平野に発達し、人家は篠堂川支流の谷出口に位置していました。この人家上流で斜面崩壊が起こり、それに伴って発生した土石流が、両岸の人家を襲いました。篠堂地区で土石流の直撃を受けた家屋にいた方が1名亡くなっています。
3.2 先大戸地区における土砂変動状況
先大戸地区を中心とした大戸川流域は、篠堂川流域と同様に急峻な斜面に囲まれた急勾配河川です。先大戸地区は扇状地状の平野に位置し、水田が広がっていましたが、人家が谷出口に位置していたため、流出した土砂や 流木の被害を受けました。ただ、先大戸地区の人家の上流側は農地改良によるコンクリート製の土留め擁壁が作られていたため、流出した土砂と流木の一部がそこに引っかかって停止し、流出量に比較して被害は少なくて済みました。
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航空レーザ計測による森林と土砂移動との関係
航空レーザ計測では、主にラストパルスの活用で高精密な地表の地形モデルが、ファーストパルスを活用することで森林の表面の形状モデルを構築できます。
さらに、表面の形状モデルから地表の地形モデルを差し引くと、樹高の分布モデルができ、また領域内のオリジナルデータ数とグランドデータ数の差と、オリジナルデータ数を比較することで、領域内の樹冠率も把握できます。
経験的に植生の貧弱な斜面ほど豪雨時の崩壊が多く発生することが知られていますが、今回の災害では植生に関係なく、凹型斜面であれば崩壊が発生していました。一方で、樹高が低くて樹冠率も低い、若い造林地のような場所では、平滑な斜面でも崩壊が多く発生しているようです(図8)。
航空レーザ計測成果から作成した樹高階と崩壊地の抽出(樹高の高いところほど緑色を濃く表現)
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