環 境

希少植物の生育適地を解析する

航空レーザなどの面的環境情報の活用

航空レーザ計測や航空デジタルカメラの普及によって、微地形や土地被覆などの面的環境情報がこれまでとは比較にならないほど詳細に得られる時代が到来しています。これらのデータを応用的に解析することによって、従来は経験則で定性的に語られることの多かった希少な植物の生育場所をより定量的に特定し、かつその分布状況を面的に表現することが可能となります。 航空機などから取得した面的な環境情報と現地調査で確認した生の情報を照合し、応用的に解析することで、生育種の現況把握のみならず、広域的な分布予測につなげることができるため、生育条件に着目した実効性のあるアプローチとしてさらに開発を進めています。

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渡良瀬遊水地での解析


ここでは、アジア航測の持つ空間情報技術と環境調査技術を融合させた実践例として、利根川中流域に位置する渡良瀬遊水地での解析結果を紹介します。ここで紹介する内容は、国土交通省利根川上流河川事務所から委託された「H21渡良瀬遊水地環境調査業務」の成果の一部です。

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希少植物と生育場所の条件


渡良瀬遊水地は、総面積が33km2にもおよぶ我が国最大の遊水地であり、広大なヨシ原は希少な植物の宝庫となっています。これらの希少植物は、毎年早春季に行われるヨシ焼きのあと一斉に芽吹きますが、出現箇所は種ごとに偏っており、地形や水分など生育場所の微妙な基盤環境条件が影響しているものと推察されました。

そこでまず、航空レーザ計測データから、「地盤高」・「傾斜」・「凹凸」などの微地形情報を整理し、これに画像解析から得られた植生区分、既往観測から得られた地下水位情報などを重ね合わせ、統計的な解析により生育場所(ハビタット)の類型区分を行いました(図1)。

区分されたハビタットと現地調査による希少植物の確認状況を対比したところ、種ごとにいくつかのハビタットを好んで棲み分けている様子が読み取れました。

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生育条件の定量化と分布予測


次に、調査対象地の基盤環境条件について、「地形」・「土地改変」・「水文」・「植生」という4つの観点からいくつかの指標を設定し、各指標の値と確認された植物種との関係を分析することにより、希少種が生育する基盤環境条件を定量的に整理しました。表1および図2に示すとおり、地盤高や地形の傾斜、地下水位など、選好する条件は種によって傾向が異なり、これらの基盤環境条件の値は、希少植物の保全を図りつつ治水整備を進めていく際に、一つの目安となるものと考えられます。また、生育域の拡大が懸念される外来植物についても同様に基盤環境条件を整理しており、これらの値は治水整備などの際に生じることを回避すべき条件としてみることができます。

さらに、定量化された生育条件を鍵に、航空レーザや航空デジタルカメラなどから得た面的データを解析することによって、希少植物の広域的な分布予測を試行しました(図3)。現地調査を行った範囲について検証したところ、予測結果は現地確認結果と概ね対応がとれており、この手法の実地への適用性が示唆されました。


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