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当社の航空レーザ計測技術を用いた古墳測量に関する研究成果が日本文化財科学会で発表されました
当社の航空レーザ計測技術を用いた古墳測量に関する研究成果が日本文化財科学会で発表されました
奈良県立橿原考古学研究所と当社が共同で実施した「古墳測量における航空レーザ計測の適用に関する研究」の成果について、日本文化財科学会第27回大会(6/26(土)、関西大学 千里山キャンパス 100周年記念会館)において発表されました。
従来の測量成果と比較して遜色ない墳丘情報を、現地に入ることなく入手することができる新たな測量方法「航空レーザ計測」により、今後の大型古墳の測量に新たな展開がもたらされるものと考えられます。
1.はじめに
考古学において測量から得る地形情報は、極めて重要であり、特に古墳において立地、墳形、尺度の研究には不可欠です。しかし大型古墳の測量は、容易ではなく、精緻な測量図を作成するには多くの制約があります。特に現在陵墓として宮内庁に所管されている古墳の測量図の大部分は戦前に作成されたものであり、その精度は現在の考古学研究の水準に達しておりません。
2.航空レーザ計測の古墳への応用
ヘリコプターなどの小型の航空機に搭載したレーザ計測システムから発射されるレーザ光により、地表面を高密度かつ高精度で計測する航空レーザ計測は、現地に立ち入ることなく安全かつ迅速に計測を行うことのできる新たな測量方法です。
この航空レーザ計測の大型古墳測量への適用について、御廟山古墳およびコナベ古墳において調査・検討が行われました。
3.堺市御廟山古墳の例
宮内庁所管の御廟山古墳(大阪府堺市北区百舌鳥本町)においては、従来の測量方法(宮内庁と堺市が実施)による成果と航空レーザ計測による成果との比較が行われました。
その結果、空中からの3次元計測により得られた墳丘情報は、現地でアナログ的な手法で得られた墳丘情報と遜色ないことが確認されました(図1)。
4.奈良市コナベ古墳の例
また、同じく宮内庁所管のコナベ古墳(奈良県奈良市法華寺町)においては、航空レーザ計測における測量の妥当性の評価が行われました。
コナベ古墳の現状は墳丘上に樹木が繁茂し鬱蒼とした木々に覆われた状態ですが、空中からの航空レーザ計測では、これらの古墳上の植生を気にすることなく地形の計測データを取得し、予想以上の墳丘および周辺の情報が入手できました(図2)。
5.まとめ
今回の御廟山古墳やコナベ古墳の空中からの3次元計測は、古墳へ足を踏み入れることなく、また障害となっていた古墳上の植生を気にすることなく、古墳を計測できることが確認できました。今後、この計測法により人の立ち入りの困難な大型古墳の精緻な墳丘および周辺地形情報の取得が可能となったことは、学術的にも社会教育的にも大きな意味があるといえます。この計測法は、航空レーザ計測に加えて当社の保有する「赤色立体地図」の技術を使用することで、前方後円墳の「造形美」を際立たせ、前方後円墳築造の意味や目的に立体的な造形への意識が強く関わっていることを印象付けさせる最適な表現法です。さらにこの計測法は広範囲での微細地形や遺構の検討、さらには古墳に繁茂する植生の研究にも役立つと考えられます。
古墳以外についても、この計測法は森林地帯(熱帯雨林等)での遺跡の立地や分布・構造、危険地域(地雷・自然災害地区)における遺跡の立地や分布・構造、土地区画の遺構(水田・水利等)、広範囲にわたる遺跡や遺構(群集墳、山城等)の把握にも適用することが可能と考えられます。
関連リンク
●奈良県立橿原考古学研究所
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