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「流域治水DXシステムVer.2」開発 ~さまざまな流域治水施策の効果を一体的に評価し、流域での合意形成を支援~
2025/08/06
アジア航測株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:畠山仁)と株式会社建設技術研究所(本社:東京都中央区、代表取締役社長:西村達也)は、既に共同で開発した「流域治水DXシステム」に分布型流出解析モデルを搭載した「流域治水DXシステムVer.2」を開発しました。今回の機能拡充により、大規模出水時の被害を少なくするためのさまざまな流域治水施策の効果を地先レベルから流域内河川の任意の箇所で定量的に評価・表示することができます。これにより、流域内の関係者間で利害の共有が可能となり、合意形成やまちづくりなどの施策立案の効率的な実施に寄与します。
1.背景
「流域治水プロジェクト」は全国109の一級水系、約600の二級水系(令和6年3月末時点)で策定・公表されており、国、流域自治体等が協働し、河川整備や雨水貯留浸透施設、利水ダムの事前放流等の治水対策が進められています。しかし、流域治水施策は地先から支川・本川までさまざまな箇所での効果が異なるだけでなく、流域内のさまざまな機関等が関わるため、関係者間での合意形成が必要な事項が多く、具体的な議論に時間を要しているのが現状です。
流域治水の推進には、さまざまな流域治水施策による地先から支川・本川までの効果を定量的に評価できるようにすることが必要であるため、2024年2月に公表した「流域治水DXシステム」(以下「既公表システム」という。)を改良した「流域治水DXシステムVer.2」を開発しました。
2.技術的な特徴
「流域治水DXシステムVer.2」は、「データ系」「解析系」「表示系」の3種類のシステムで構成されており、主に「解析系」「表示系」の機能拡充を行いました。
① データ系
データ系システムは、降雨データ、3次元管内図で対象としている流域・河道データ、河川構造物データなどを蓄積しています。なお、降雨データは、メッシュごとのデータの取り扱いを可能としました。
② 解析系
解析系システムは、既公表システムと同様に、さまざまな降雨条件による流域からの流出量、河道水位、氾濫現象を解析し、流域治水施策の効果を算定できるシステムであり、各解析方法は表-1に示すとおりです。
また、流域治水DXシステムVer.2では、既公表システムに比べ、評価可能な流域治水施策の追加を行っています(表-2参照)。表-2の流域治水施策の位置、規模、諸元を入力すれば、地先、支川、本川の任意の地点の効果を算定することができます。
表-1 流域治水DXシステムVer.2の解析方法
|
既公表システム |
流域治水DXシステムVer.2 |
流出解析 |
貯留関数モデル |
分布型流出解析モデル |
河道解析 |
一次元不定流モデル |
一次元不定流モデル |
氾濫解析 |
平面二次元モデル |
平面二次元モデル |
表-2 流域治水DXシステムVer.2で評価可能な流域治水施策
大分類 |
小分類 |
メニュー |
流域での施策 |
貯留・浸透対策 |
田んぼダム整備 貯留施設(公共施設、防災調整池等) 各戸貯留整備 |
浸透施設整備 |
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氾濫原保全 |
貯留機能保全区域指定 |
|
河川管理施設 |
ダム、遊水地 |
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地形の改変 |
地盤嵩上げ、盛土、二線堤 |
|
河道での施策 |
河積確保 |
堤防整備 |
河道掘削 |
||
流域+河道での施策 |
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樋管整備 |
排水機場整備 |
注:赤字が新たに評価可能な流域治水施策
③ 表示系
表示系システムでは、既公表システムと同様に、3次元管内図等のデータを用いた編集・集計、解析系システムの解析結果を用いた結果の表示が可能であり、地先~流域全体の任意の箇所での水位・流量ハイドログラフや水位縦断図、浸水エリアの3次元表示、アニメーションなども表示可能です。
また、地先~流域全体の任意の箇所での流域治水施策の効果の表示、施策実施による効果(差分)分析機能も追加しました。
これにより、表-3、図-3に示すような流域治水施策ごとの効果の整理を行うことができます。
3.今後の展望
浸水被害の危険性を関係者や流域住民にわかりやすく伝えることは、流域治水施策を進めていく上で重要です。我々は、今回開発した「流域治水DXシステムVer.2」を用いて、流域治水プロジェクトの具体化、実現による社会全体の水防災への貢献を目指します。
■プレスリリース・記事の印刷 (pdf・1456KB)
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