森林・環境

空間情報技術を活用した藻場の分布調査と造成適地マップの作成<事例紹介>

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はじめに

 国内の藻場は沿岸開発や埋め立てによる浅海域の喪失、さらには地球温暖化による海水温の上昇により近年減少しています。特に瀬戸内海では、1960年から1990年にかけて7割の藻場が失われたという調査報告があります。 藻場は海洋生態系において重要な役割を果たし、多種多様な海洋生物に生息地や産卵場所を提供するほか、大気中の二酸化炭素を吸収・貯蔵して気候変動の緩和に貢献するブルーカーボン生態系としても注目され、近年、藻場の保全や再生の取組みを進める自治体や企業が増加しています。
 藻場の分布実態や造成適地を把握するためには、従来、潜水目視調査や音響測深調査、船上からの目視確認が一般的でしたが、これらの調査には多くの作業日数を要し、浅場の岩礁帯での作業は危険を伴い、広域的な調査には適さないという課題があります。ここでは、アジア航測が有する空間情報技術を活用した藻場の分布状況把握と、藻場造成に適した地域の選定手法についてご紹介します。

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航空写真や衛星画像を活用した藻場分布の把握

 アジア航測は多くの自社航空機、整備士、操縦士、撮影士を有し、航空レーザ測量や空中写真撮影の豊富な実績があります。

 藻場分布の調査では、まず藻場が生育している浅海域を対象に空中写真撮影を行い、取得した写真に座標情報を付与する解析処理や複数の単写真を合成する作業を行い、デジタルオルソ画像を作成します(既往の事例では地上画素寸法20cmで作成)。

 このデジタルオルソ画像から藻場の外郭を判読することで、広範囲の海域における藻場の分布状況と面積を把握できます。また、潜水目視調査やROV(水中ドローン:Remotely Operated Vehicle)調査を同時に実施することで、藻場を構成する種類や被度、底質の詳細を把握できます(図1)。空中写真の代わりに高解像度衛星画像データを用いた判読も可能です。ご予算や求めるデータ精度に応じて最適な手法をご提案いたします。

図1

図1 藻場の分布状況の整理例


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藻場ヒートマップおよび藻場造成適地マップの作成

 複数年にわたる藻場のモニタリング調査結果や過去の文献データを、GIS(地理情報システム)を用いて解析することで、藻場の増減率を示す藻場ヒートマップが作成可能です(図2)。ヒートマップは、区域ごとの藻場の増減傾向を視覚的にわかりやすく把握でき、海流の向きや地形の特徴、沿岸開発の履歴、各種水質調査結果などと比較することで、藻場増減の要因推測にも役立ちます。

  また、算出した増減率に加え、藻場が形成・発達しやすい水深帯や種子の拡散エリア、漁港からの距離を加味することで「藻場造成適地マップ」を作成することも可能です(図3)。

図2

図2藻場の増減率のヒートマップ

図2

図3 藻場の造成適地マップの作成手順

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おわりに

 藻場の分布面積の拡大は、水産資源の安定供給により、地域経済の発展をもたらすほか、脱炭素社会の実現にも貢献します。そして、藻場の保全や造成活動は、地域住民や教育機関、企業、自治体などを巻き込むことで、将来にわたって持続可能で健全な海洋生態系を維持し、地域の産学官民のつながりを強化することも期待できます。

  アジア航測では、空間情報技術を用いて藻場の分布図や造成適地マップの整備を支援し、効果的な藻場の保全・造成活動に貢献します。



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