NEWS
『地理空間情報×AI』の研究開発 ~AIによる3D点群データの自動分類、衛星画像・航空写真の超解像~
2024/11/05
アジア航測株式会社(本社:東京新宿区、代表取締役社長:畠山 仁、以下「当社」)は、航空レーザ計測や車載レーザ計測によって得られた3D点群データから地上の物体をAIにより自動分類する技術を開発しました。また、Sentinel-2衛星画像や地上解像度が低い航空写真をAIにより4倍に高解像度化する技術(超解像)を開発しました。
■AIによる3D点群データの自動分類
当社は、自社が保有する最新鋭の航空機とセンサーにより3D点群データなどの空間情報の収集・解析から、活用方法の提案や事業実施プラン策定までトータルなサービスの提供を行っています。
航空レーザ計測によって得られる3D点群データは、地表面の高さ(数値標高モデル)や建物・樹木などの地物を含む高さ(数値表層モデル)の情報に加工され、河川・砂防の調査・計画や火山防災分野を始め、道路・橋梁・鉄道・電力など社会インフラ設備の設計・管理、都市計画、森林調査などさまざまな分野で利用されています。
また、車載レーザ計測の3D点群データは、トンネル壁面の点検をはじめとして街路樹や標識、信号等の道路附属物の管理、路面性状の点検などに利用されています。
このような3D点群データは、計測直後は3D座標の集合であり、一点一点に物体の種別が記録されているわけではありません(図1)。そのため、従来は人の手によって物体の種別を分類する作業を行ってきましたが、この作業には膨大な時間とコストがかかります。
そこで当社は、セマンティック・セグメンテーションと呼ばれるAI技術を用いて3D点群データの物体種別を自動分類する技術を開発しました(図2、図3)。これにより、現在の事業活動における作業を省力化するだけでなく、今後、サイバー空間上に現実世界の物体を種別付きの3Dデータとしてシームレスに構築することが可能になるため、各種デジタル情報やサービスと組み合わせることで新たな価値創造に役立たせることができます。
【特長】
・航空レーザ点群のAI自動分類は鉄塔、送電線などの電力設備を高精度に分類できるほか、建物や車、植生、地面など数多くの地物を分類
・MMS点群(車載レーザ)のAI自動分類は車、地面、建物といった道路周辺の地物を高精度に分類できるほか、人・二輪、標識、防護柵、電線など数多くの物体を分類
図1 3D点群データの計測からAI自動分類まで
図2 航空レーザ点群のAI自動分類例
図3 MMS点群(車載レーザ)のAI自動分類例
■AIによる衛星画像・航空写真の超解像
超解像とは、解像度の低い画像では不鮮明な細部の情報を復元する技術のことで、テレビや映像の世界で発展しています。高度数百キロメートル以上の上空から撮影された人工衛星の画像は、一度に広域を観測できるメリットがある一方で、ドローンや航空機など近接で撮影された画像と比較して地上解像度が相対的に低いデメリットがあります。そのため、人工衛星の画像に超解像技術を適用して擬似的に高解像度の画像を生成することができれば、さまざまな分野への応用が期待できます。
当社は、欧州宇宙機関(ESA)の光学衛星Sentinel-2画像(10m解像度、5日に1回撮影)を用いて、AIにより擬似的に4倍に高解像度化する技術を開発しました(図4)。AI技術を用いた超解像は、学習に基づいて細部を復元する方法のため、生成された情報が必ずしも現実と一致するとは限らないことに留意する必要がありますが、概して自然な画像を生成することが可能です。そのため、高頻度なモニタリングが求められる農業や環境の分野への利用が期待されています。
また、当社は2つめの事例として、超解像技術を建築物LOD2モデルの屋根面テクスチャの高解像度化に応用しました。近年、3D都市モデルの利用用途の拡大に伴い、モデルテクスチャのクオリティに対する要求が高まっています。そこで、国土交通省都市局が推進するProject PLATEAU※1に参画し、AIによる超解像を利用して航空写真画像を精細化し、視認性の良いテクスチャを生成する技術を開発しました。本技術は、建築物LOD2モデルを自動作成することができるソフトウェアの一部として、GitHub※2に無償公開されています(https://github.com/Project-PLATEAU/Auto-Create-bldg-lod2-tool)。
【特長】
・無償のSentinel-2衛星画像に超解像技術を適用して高精細な画像を生成
・航空写真画像に超解像技術を適用して高品質な屋根面のテクスチャを生成
図4 AIによるSentinel-2衛星画像の超解像例
図5 AIによる航空写真の超解像例
※1「PLATEAU」は、国土交通省が推進する日本全国の都市デジタルツイン実現プロジェクトです。都市活動のプラットフォームデータとして3D都市モデルを整備し、様々な領域でユースケースを開発するとともに、誰もが自由に都市のデータを引き出せるよう、3D都市モデルをオープンデータとして提供しています。
※2「GitHub」はソフトウェア開発者がソフトウェアのコードを管理したり、公開したりするためのプラットフォームで、無料で利用できるWebサービスです。「Project PLATEAU」のように、オープンソースプロジェクトも多く公開されています。
以 上