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千葉達朗は、アジア航測のフェローです。
総合研究所に所属し、パソコンと本の山か、ホンモノの山の中で活動しています。
千葉センセイの凸凹ばなし

デスクのまわりはかたづけましょう
“ちばたつろう”といえば、知る人ぞ知る有名な火山学者。1998年に開設した「ある火山学者のひとりごと掲示板」や「千葉達朗の火山のページ」には、多くの方が訪れます。毎週土曜日には、日本大学文理学部地球システム科学科で教鞭もとります。 小さいころから成長するまで、絵や美術に興味を持ち、プログラミングに興味を持ち、地形に興味を持ち、ナニカをいつも発見し、ナニカをいつも生み出しています。


赤色立体地図の発明の萌芽は、小さい頃の記憶。自分の狭い範囲しか認識できなかった幼児が、小学生になって近所の地理や地形を認識しはじめる。発達心理学からみて一般的なことではありますが、ここで千葉は微細な地形、高低に興味を持つ。やはりちょっと変わった子供だったかもしれません。
高いところが好き?
高いところから町をながめる
さて、「夢の扉+」のロケのお話です。
ロケ地は千葉の故郷の「石巻」、赤色立体地図第一号のきっかけとなった「富士樹海」、来年世界で唯一の溶岩導流堤が完成する「伊豆大島」です。

車載型360度カメラです
<石巻ロケ>
石巻のロケは、アジア航測が自主的に東日本大震災以降、車に搭載した360度カメラで定期的に撮影記録する作業の中で行われました。

車を移動しながら、周辺の画像を取得していきます。2011年3月26日から7回目の撮影です(画像はLVSquareで公開されています・特設ページへ)

同時に、航空レーザ計測を実施しました。
石巻ロケの様子
車載型360度カメラです
石巻ロケの様子

ときどき、赤色立体地図航空レーザ計測データとイコールだと勘違いされることがありますが、赤色立体地図は、数値標高モデル(DEM; Digital Elevation Model)を、1枚の地図で3次元的に見せる、今までにない地形表現技法。だから、メッシュサイズが異なる日本全体の10mメッシュや50mメッシュ(国土地理院基盤地図(標高))や地球全体の4kmメッシュ(ETOPO2)などからも赤色立体地図をつくることができます。


ETOPO2から生成した赤色立体地図
ETOPO2から生成した赤色立体地図


もちろん航空レーザ計測のデータを用いて赤色立体地図で表現すれば、いままでにない精密な計測と分かりやすい3次元的な表現の相乗効果があります。航空レーザ計測は、その名のとおり、航空機に搭載したレーザ測距装置で計測する技術。しかしながら、予定している自社の航空機は、近畿で豪雨をもたらした低気圧の影響で、なかなかフライトできない状況に。
間に合うか!


キャラバンⅠ
 
撮影中"
 
レーザ計測機器の一部"
撮影機キャラバンⅠ
 
撮影中
 
レーザ計測機器の一部


予定より4日遅れてのフライト、偶然に航空レーザ計測の日程が地上取材と合いました。
ぴったり、千葉のいる石巻の日和山の真上をアジア航測の撮影機が飛んだ!
やはり千葉、なにか持っている・・・。
千葉の真上を飛ぶキャラバンⅠ


<富士樹海>
3日後、早朝から富士樹海へ。

樹海の下の地表は、いままでの航空写真による手法では、樹木に隠れて見えないため、正確な情報が取れていませんでした。また、地形図の等高線も微細な凹凸が読み取りにくく、山か谷かわからないため、調査に向かう千葉は「絶対迷ってしまう」、とアセリました。

そこで、生まれたのが赤色立体地図。2002年のことです。
航空レーザ測量では、上空から発射した何十万発ものレーザ光線の一部が樹木の間を通過して地表に到達し反射して戻ってくる時間から地形を計測します。この航空レーザ計測赤色立体地図により、樹木に覆われた地形が立体的に可視化され、これまで誰も発見できなかった小さな火口が確認された。また、溶岩の流れも解明された!

当時はこのグロテスクな映像(!)は、いろいろな意味でインパクトを与えたようです。
火山山頂火口
火山山頂火口

お疲れモードさん 説明する千葉 ロケでは、女子大生のグループにも遭遇し、なかなかの賑わい。
氷穴は本当に涼しかったー。
制作のかたは連日のロケにそろそろお疲れモードでしたが・・・。


<伊豆大島>
翌日、伊豆大島へ。
晴天男なのか、高速ジェット船から富士山がきれいに見えました。

千葉は大学に勤務していたころからたびたび、三原山を訪れています。
1986年の噴火の調査をしている最中になにか唸るような音が聞こえ、ちょっと後ずさりした、その前約250mのところで、突然割れ目噴火が発生しました。
それ以来、ずっと大島を火山災害から守りたい、という想いを持ち続けていたようです。

鳥瞰図
鳥瞰図

富士山が見える
模擬溶岩
模型実験の様子
帰りの飛行機からもきれいな富士が
模型実験の溶岩は
リンスインシャンプーの水割り
模型実験の様子


来年完成予定の溶岩導流堤に、東京都大島支庁の職員の方に案内していただきました。
世界で唯一の溶岩導流堤。
橋を架けてから山を切り崩した溶岩導流堤をまたぐ大宮橋。
海まで続く大きな空間と山の途中の東屋から見る眺望。
ここにしかないこの風景は、観光資源としても、これから大いに期待できるのではないでしょうか?


8月の炎天下、ごつごつした溶岩のなかを何度も歩き、撮影される千葉。
いやー、本当に大変ですね。



大島の海
溶岩の中を歩く
溶岩導流堤をまたぐ大宮橋
東屋から眺めた大島の海
溶岩の中を歩く
溶岩導流堤をまたぐ大宮橋


<夢の扉へ>
新たに計測して作成した石巻の赤色立体地図を、東北学院大学の宮城教授、千葉大学の金田准教授、防災科研の井口先生、日本大学の高橋教授、および市民の方々にご覧いただきました。
いちど見るだけで印象に残る、こどもから80歳のお年寄りまで誰もがわかる、といった、本当にうれしいご意見を頂きました。
ありがとうございます。


さて、社内にておきまりの「I have a dream!」の撮影。
そのあとボソッと。「夢だなんて思ったことないんだけどなあ・・・。」
そりゃそうだ、
千葉達朗はいつでも「夢(の)中」だから・・・。




<放映されなかった千葉の名言>
赤色立体地図は私が発明したというより、「みつけた」のだ。
いままで誰も気がついていなかった簡単な原理に気づき、育て、それが赤色立体地図となった。
じつは、自分でも、なぜこれが立体にみえるかは解明しきれていない。
認知心理学やアートなどの異分野の世界中のさまざまな研究者がこの技術に着目している。今後、共同で研究コラボレーションしていくことで、もっと発展していくのではないか。子供といっていい赤色立体地図の孫やひ孫が、どんどん世界に旅立って、活躍していくことを信じている。



<謝辞>
多くの方々から、取材にご協力いただきました。ここに感謝の意を表します。

●特にご協力いただいた方々●
国土交通省富士砂防事務所
東京都大島支庁土木課
奈良県立橿原考古学研究所 副所長 西藤清秀さま
日本大学文理学部地球システム科学科 教授 高橋正樹さま
防災科学研究所 自然災害情報室長 総括主任研究官 井口隆さま
東北学院大学 文学部史学科 教授 宮城豊彦さま
千葉大学大学院理学研究科 准教授 金田平太郎さま
石巻市のみなさん

お忙しいところ本当にありがとうございました。


(取材:サカイ)


■LiveViewによる石巻のパノラマ動画
2012年8月16日撮影

「TBS 夢の扉+」で紹介された石巻市の赤色立体地図と
  番組内で撮影したLiveView(全周囲画像)を公開しました。(2012/8/27 11:00)
  会議室No.003よりご覧いただけます。
   (※ダイレクトログインはこちらから)
※操作方法
上の画像を左クリックしたまま移動することによって、パノラマ画像を自由に動かすことができます。

※右下の操作ボタンの説明
  ①カーソルを上に移動すると拡大、下に移動すると縮小します
  ②矢印の方向に画像が移動します
  ③逆再生します
  ④一コマ画像を戻します
  ⑤再生を停止します
  ⑥一コマ画像を進めます
  ⑦再生します
  ⑧数字が大きくなるほど早く再生します(1~5の5段階)



赤色立体地図 サンプルダウンロード


国土地理院のデータを用いた赤色立体地図デジタルデータ製品には、「rrim50」、「rrim10」、「rrim5」があります。
(クリックで画像拡大します。マウスの右クリックで画像を保存してください。)
rrim50 数値地図50mメッシュ(標高)より生成したデータ rrim10 数値標高モデル(DEM)10mメッシュ(標高)より生成したデータ rrim5 数値地図5mメッシュ(標高)より生成したデータ
rrim50 rrim10 rrim5
数値地図
50mメッシュ(標高)より
生成したデータ※1
数値標高モデル(DEM)
10mメッシュ(標高)より
生成したデータ※1
数値地図
5mメッシュ(標高)より
生成したデータ※1
※1: この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50mメッシュ(標高)、数値地図5mメッシュ(標高)及び基盤地図情報を使用した。(承認番号 平22業使、第278号)

関連リンク

TBS 夢の扉+ 公式サイト

赤色立体地図(Red Relief Image Map)|事業・製品情報|アジア航測株式会社

スカイビュースケープ「山っぷ」|事業・製品情報|アジア航測株式会社

CSR活動|アジア航測株式会社