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2. 研究部設立と解析航空三角測量法の開発(S30)

弊社は創業当時より、つねに最先端の技術に立脚して企業活動を行うことに努めています。創業翌年の昭和30年(1955)11月には、弊社は早くも研究部を設けています。

当時、航空写真撮影はすべてモノクロによるものでしたが、昭和31年(1956)から東京大学生産研究所丸安隆和研究室に派遣された研究部の西尾元充は、研究を重ねた結果、カラー航空写真の実用化に成功しました。また、航空写真を用いて地質構造を解析するPhoto-geology(写真地質学)という新分野に、赤外線写真を活用する手法をとり入れる道を拓きました。

 

当時最先端だったステレオプロッティングマシンA8精密図化機

 

測量第一課長の上谷良吉は、昭和32年(1957)秋ごろから航空三角測量をコンピュータにより数学的に解析する方法(解析航空三角測量法)の研究を始め、これの実用化開発をめざしました。

上谷の研究は、当時のこの分野の研究の前提にとらわれないものでした。この研究が成功して、業界にこれを発表した時、成功を信じるものはいませんでした。

彼は、はじめにアメリカのUNIVAC120を用いましたが、性能不足で処理できず、次に国産初の科学演算用コンピュータNEAC-2201(日本電気製)を用いました。昭和35年(1960)2月にはプログラムの一部ができあがり、テストを行いましたが、このときは、正しい答えは導き出せませんでした。その直後、NEAC-2201がパリの展覧会に出品されることになって使用できなくなったため、上谷は独自に発想した方式で、しかも手回しの計算機を用いて開発を続けました。その後、NEAC-2201の後継機の2203型機の使用が可能になり、それを用いて、ついに同年12月、解析航空三角測量法の開発に成功しました。当時、世界各国で公的機関がこの技術の開発にしのぎを削っていた中で、弊社によって世界で初めて実用化されたのです。


解析空中三角測量の基本となる共線条件を示すメモ

 

上谷良吉
 

これにより、航空写真測量はデジタル化への第一歩を踏み出し、生産性と精度管理が飛躍的に向上しました。昭和36年(1961)には毎日新聞社の毎日工業技術奨励賞を、翌37年(1962)には建設大臣賞を受賞しました。また、昭和37年(1962)にロンドンで開催された国際写真測量学会の総会で論文を発表、世界に新技術を知らしめました。今では、解析航空三角測量法は、航空写真測量において不可欠な技術となっています。

 

この時期、弊社は相次いで新たな技術を発明しています。上谷は、ほかにも道路線型計算で必要不可欠なクロソイド関数の発明(共同開発者 黒岩五郎氏)など、多くの業績を残しました。主任研究員の倉持玉之助の日本初の航空写真用の精密立体点刻機、精密座標測定機開発、地面傾斜測図機、製図係長の佐々木淳二は2重膜式スクライビングベース(特許315238号)、スクライビングトレーシング用フィルム(特許303958号)など、多くの成果を残しています。