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みなさん、こんにちは。今村遼平です。
今回のテーマは「地震発生のメカニズム」です。

今回は、地震の発生(誘因)を地震のメカニズムと日本で起こる地震のタイプから整理してみましょう。

地震のメカニズムを理解するために、まず地球の構造から説明します。
地球は半径が約6,400kmの球体で、地表から5~80kmまでの「地殻(厳密にはリソスフェア、岩石圏)」、そこから2,900km付近までの「マントル」、それより内部の「核」の、三つの部分から成っています。これはちょうど卵の切り口のようなもので、地殻が卵の殻、マントルが白味、核が黄味のような構造です。地殻の厚さは大陸地域では30~40km厚いところで80km程度ですが、海洋地域では5km程度です。
地球の構造
地球の構造
『地震タテ横ななめ』(電気書院)

この地球全体からみて薄い地殻は、地球全体の体積の83%を占めるマントル流(卵の白味相当部分)により移動しています。地震の原因を説明する際によく耳にする「プレート」とは、このリソスフェアからなる剛体で、地球上のリソスフェアが10枚ほどに分割されたものです。

日本列島では、海洋プレート(東日本では「太平洋プレート」、西日本では「フィリピン海プレート」)がマントル流によって日本海溝付近で下に曲がり、大陸プレートとすれあいながら、その下に沈みこんでいます。



日本付近やアメリカ西海岸付近など、海洋プレートの両端部に起こる地震は、次の四つのタイプに分けられます。

地震の4つのタイプ
地震の4つのタイプ

(1)大陸プレートが海洋プレートに押されるために、日本列島付近で生じる圧縮ストレスが原因するもの(内陸性直下型地震、すなわちプレート内地震)
(2)海洋プレートが沈み込むために、折り曲げられる際に生じる引っ張りに原因するもの(海洋性浅発地震
(3)大陸プレートと海洋プレートがすれ合う部分で、大陸プレートが海洋プレートに引き込まれたあと、元に戻る際の“はね上げ”で生じるもの(プレート境界性巨大地震
(4)一度、折れ曲がった海洋プレートが再度引き伸ばされることによって生じるもの(深発性地震


このうち、(3)「プレート境界性巨大地震」が最も広域に及んで、大規模な被害をもたらすM8クラス以上の巨大地震であることは、地球表層部の内的原因からも理解できます。

2011年3月11日に起き、東日本大震災を引き起こしたM9.0の「東北地方太平洋沖地震」は、このタイプです(拙著『リアルM9.0』を参照)。今後、M8以上の地震が危険視されている南関東や、東海・東南海・南海などの地震もこのタイプです。

一方、(3)より規模は小さい(M8.0~6.0クラス)が全国的で高頻度に起こる地震は、(1)の「内陸性直下型地震」で、活断層が関係していると考えられている地震です。最近では1995年の兵庫県南部地震、2004年の新潟県中越地震、2005年の福岡県西方沖地震、2008年の岩手・宮城内陸地震や新潟県中越沖地震などは、いずれもこのタイプです。

1995年1月17日に6,434人の犠牲者を出した兵庫県南部地震は、野島断層(淡路島)など三つの活断層が動いて発生したと考えられています。日本全国には2000以上の活断層が知られており、未発見のものもかなり多いはずです。内陸性直下型の地震は、これら過去に動いたことのある活断層が再活動して発生することが多いのです。


平成16年(2004年)新潟県中越地震
2004年新潟県中越地震の被害
信濃川沿いの斜面崩壊。JR上越線の路盤が流失した。線路が宙吊りになっているのが判読できる。
野島断層(淡路島)
1995年兵庫県南部地震の被害
北淡町小倉付近の地震断層(立体写真)。
(いずれもアジア航測撮影)


ここで、地震を起こす原動力となる「断層」の型による分類を簡単に説明しておきましょう。
地震は、断層の動き方によって、大きく三つ(横ずれを二つに分ければ四つ)の型に分けられます。

(1)正断層 断層面を境にして、上盤(断層面より上側の岩盤)が下盤(下側の岩盤)に対して、ずり下がる。
(2)逆断層 断層面を境にして、上盤が下盤に対して、のし上がる。
(3)横ずれ断層 断層面を境にして、水平方向にずれる。
  「右横ずれ断層」=断層に向かって相手側のブロックが右に動いた場合
  「左横ずれ断層」=断層に向かって相手側のブロックが左に動いた場合

 
(気象庁HPより抜粋)


プレート境界性巨大地震では、大陸プレートが海洋プレートに引き込まれたあとに元に戻るさいの跳ね上げで生じるため、断層は逆断層型になります。深さ70km付近の大陸リソスフェアと海洋リソスフェアの擦れ合い部分で発生して、広域にわたって被害をもたらします。
海洋型浅発地震は、大陸プレートの下へ沈み込むときに上面が引っ張りこまれるため、引っ張り力の領域にあって正断層の形成になります。

日本海溝から数10km陸側までの範囲で起こる地震は、ほとんどが水平方向の引っ張り力によるもので、海洋プレートの上面が日本海溝付近で折り曲げられる際に、引っ張り力が働いて東西に伸びるために起こると考えられています。

日本列島内部の大陸プレート内部で起こる地震(いわゆる直下型地震)は、海洋プレートに押される側であるため、基本的に断層は逆断層型となりますが、関東以西では横ずれ断層もときどき認められます。この地震の多くは15~20kmまでの深さで起こっていて、移動してきた海洋プレートに押されて大陸プレート内にたまった東西方向の圧縮性のストレスが原因となるものが多いようです。

震源が浅いほど地表面までの距離が短いため、地震エネルギーが減衰しにくく、一般的には地震による揺れも大きくなります。震央からの距離が離れるほど地震波は衰退するため、震度分布は震央を中心とした同心円状に広がります。

しかしながら震源地から遠く離れているのに、比較的強い揺れが起こることが稀にあり、この場所を「異常震域」と呼んでいます。
震源の深さ

異常震域の発生には、日本列島の下に斜めに沈みこんでいる「太平洋プレート」が大きく関わっています。硬いプレートの中を伝わる地震波は、波動エネルギーの減衰が小さく、遠くまでよく伝わる。これとは逆に、プレートと地殻に挟まれた日本列島下の上部マントルでは地震波の減衰が著しく大きく、ここを通過する地震波のエネルギーの多くが吸収され、地表に到達する前に弱まります。
2003年の紀伊半島沖が震源の際には、震源近くの近畿地方より東北や関東地方の揺れが大きくなっています。これは地震波が近畿地方などの下にある厚い上部マントルに吸収され、岩板(プレート)に沿って東北地方の浅い場所まで上がってきたためと考えられています。
震源の深さ

筆者が、「『この大揺れは初体験ながらも、震源はかなり遠方だな……』と密かに計算」できたのも、上記のことがらを認識していたからだと思います。


今村センセイの地震タテ横ななめmini
次回もご期待ください!