環 境

東アジア・オセアニア地域のサンゴ礁マッピング <業務実績報告>

ALOSデータによる最新のサンゴ礁分布の把握

サンゴ礁は生物多様性が高い場所であることから海洋における重要な生態系の一つであるとともに、海岸保全機能や漁場、景観要素、観光資源などとしてさまざまな役割を果たしています。その一方で、水温の上昇や開発による土壌流出、オニヒトデによる食害、観光客や経験の浅いダイバーの接触など、さまざまな原因によって世界的に衰退傾向にあります。そのため、海洋保護区の設置やその効果的な管理等を通じた海洋の生物多様性保全の必要性について、世界的な認識が高まっています。 こうした背景のもとにわが国では、国際サンゴ礁イニシアティブ(ICRI)を通じて東アジアを中心とする地域のサンゴ礁保全の取り組みを進めてきました。 環境省は、この取組の一環として、東アジア、オセアニア地域のサンゴ礁マッピングの事業(「平成21年度第2次サンゴ礁分布図作成業務」)を行いました。アジア航測はこの事業を請負いましたので、その成果の一部を「平成21年度第2次サンゴ礁分布図作成業務報告書」より抜粋して紹介します。

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サンゴ礁分布図の概要


図1にサンゴ礁マッピングに使用された衛星画像の範囲を示します。東アジア・オセアニア地域の海岸線と過去のサンゴ礁データの範囲を全て網羅するため、2009年末までに撮影されたALOS AVNIR-2画像1261シーンの他、雲などのために良好な画像が得られない範囲についてLANDSAT画像302シーン、合計1563シーンを収集しました。衛星画像を画像分類することによって得られたサンゴ礁分布図は、「サンゴ被度5-50%」、「被度50-100%」、「海藻・海草」、「砂底」、「泥底」、「裸岩」、「深いサンゴまたは砂」、「サンゴ被度5%未満または砂底」、「サンゴ被度5%未満または裸岩」の9項目で構成されます。

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サンゴ礁マッピング


東アジアなどの長大な沿岸域を連続した分布図として作成するためには、それぞれの衛星画像撮影時の潮位の違いや大気の状況の違い、ハレーション、土砂流出による海表面状況の違いを考慮する必要があります。

そのため、まずは地域によって分類精度が大きく異ならない分類手法を採用し、さらに自動抽出手法だけに頼らずサンゴ礁の生育環境の専門知識に基づいた判読によって分布図の分類精度や均質性を確保しました。図2にサンゴ礁マッピングの例を示します。分類結果と既存のサンゴ礁データ(ReefBase / WorldFishCenter)を同じ水平解像度の画像に変換して重ね合わせ、既存データのサンゴ礁が含まれる画素数と、両データの同じ位置の画素でサンゴ礁が含まれる画素数を集計し、その割合を求めた結果、既存のサンゴ礁が70%以上の精度で抽出されたことがわかりました。また、これまで入手できなかったソロモン諸島やフィジーのサンゴ礁データが今回新たに整備されたため(図3)、今後、サンゴ礁分布と現状の海洋保護区分布を比較するギャップ分析などへの活用が期待されます。

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事業の成果と活用


本事業では東アジア・オセアニアの広大な範囲について最新のサンゴ礁分布が得られました。本成果は国際的なサンゴ礁保全活動に資するとともに、CBD COP10(生物多様性条約第10回締約国会議)を契機に生物多様性の重要性が認知される中、多様性保全のための取り組みとしても大きな意義があります。また、2009年以降の宇宙基本計画によるわが国の宇宙産業育成が進められる中、リモートセンシング技術を実利用化した事例の一つとしても重要な意義があると言えます。

本事業の成果は、2011年4月に国際サンゴ礁研究・モニタリングセンターのホームページで公開され(http://coralmap.coremoc.go.jp/sangomap_jpn/)、ReefBaseにおいて公開がアナウンスされました。


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