環 境

アルゴスシステムによる希少猛禽類の追跡調査

希少猛禽類の基礎的情報の収集

オオタカなどの国内希少野生動植物種に指定されている希少猛禽類は、全国各地の山地や里地などの開発の予定地において繁殖が確認されており、希少猛禽類を保全する上で問題となっています。希少猛禽類の生態については、まだ十分に解明されていないところが多く、行動の把握も目視観察によるところが大きいのが現状です。 しかし、目視観察のみでは行動把握に限界が多く、巣立ち後の幼鳥の分散状況や非繁殖期の成鳥の行動などを把握することが困難となっています。そこで、従来の生態調査では得ることのできない希少猛禽類(ここではオオタカ))の基礎データを取得するため、幼鳥および成鳥に小型発信機を装着して追跡調査を行っています。

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アルゴスシステムとは?


幼鳥や成鳥の追跡方法として、フランスのアルゴス社の衛星システムを活用しています。発信機から送信される個体の位置情報に関するデータは、以下のような流れで提供されます。

①固定観測装置や移動体上のアルゴス送信機は、自動的に「メッセージ」を送信します。
②極軌道を周回する衛星がこのメッセージを受信し、地上受信局に転送します。
③地上受信局はアルゴスデータ処理センターにデータをリレーし、ここで位置の計算やセンサーデータ処理などを行ってデータベースに保存します。
④各ユーザは、このデータベースにアクセスして、データを利用します。

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アルゴス発信機


これまで使用した実績のある小型発信機は、GPSを搭載していないアルゴス発信機とGPSを搭載したアルゴス発信機です。GPS非搭載型のアルゴス発信機では、取得データの精度が誤差150m未満から1km以上になる場合があるのに対し、GPS搭載型のアルゴス発信機では、誤差数mのデータを得ることが可能となります。
発信機は、装着する猛禽類の負担をできる限り軽減する重量のものを使用するようにしています。

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GISソフトの活用


インターネットを介して得られた位置情報は、表計算ソフトのデータに転換し、さらにGISソフト上でデータの蓄積や表現をおこなっています。
GPS搭載型のアルゴス発信機により得られるデータは、位置に関して信頼性の高いデータとして数値地図上で表現しています。
図3は数ヶ月間に得られたデータをとりまとめた例です。個体が同一箇所に滞在している様子や、少しずつ東の方向へ移動する様子が確認できるなど、詳細な情報を得ることが可能です。

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解析の成果

現在までに蓄積されたデータは、まだ十分とはいえませんが、目視観察では把握することができなかった行動も少しずつ確認されています。
たとえば、巣立ち後の幼鳥がどの程度の距離を移動するかについては、これまで推測の域を超えることはありませんでしたが、データ解析により、個体によっては日本を横断するほどの距離を移動することが確認されています。また、巣立ち後まもなく死亡してしまう個体が存在することも確認しています。

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今後の展開

今後は、これらのデータを蓄積して解析を進めることで、幼鳥については巣立ち後の死亡率や巣からの分散状況、移動距離などの把握、成鳥については通年の行動圏を把握することにより、対象とする地域の生息数の現状と収容力との関係の評価を行い、希少猛禽類の保全対策に役立てることを目指しています。


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