流域マネジメント

河川の堤防高評価

航空レーザ計測成果を活用した河川管理に向けて - 河川の堤防高評価(スクリーニング手法)についてご提案します


図2 堤防が低く堤内地に越水する様子
■ 日本の気候変動の状況 我が国では気候変動による影響により、1時間に50mmや100mmを超す集中豪雨が増加しています。 さらに近年では、ゲリラ豪雨と呼ばれる予測困難かつ局地的な短時間豪雨により、人的被害も発生しています。 ■ 日本の土地利用状況 我が国の資産は、人口の約50%、資産の75%が洪水はん濫区域(国土面積の10%)に集中しており、ひとたび洪水が発生すれば、その被害は深刻です。 こうした気候の変動や土地利用の状況などから、治水対策の重要性が高まっています。

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堤防管理の重要性


堤防の管理は計画高水位(H.W.L.)を基準に行われます。計画高水位は対象となる計画高水流量(例えば100年に1度の洪水など)を算出し、この流量が発生したときの河道における水位を包括するように設定します。計画堤防高は、この計画高水位に余裕高を加算したものです(図1)。
計画堤防高を確保できない堤防箇所(余裕高が不足する)は、洪水時には越水はん濫により堤内地が浸水するほか、破綻の危険性が高まるなど、治水安全上のネック地点となります(図2)。
このため、現況堤防高を管理することにより、ネック地点を確認することが可能です。

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従来手法による堤防高の把握


■定期縦横断測量の実施
従来、堤防の高さや形状を把握するには、陸部では水準測量、水部では深浅測量を実施し、河道計画、維持管理に必要となる縦横断形状を把握しています(図3)。
この縦横断測量成果は概ね200m間隔で実施され、5年から10年に1度更新されています。

■ 堤防高把握における定期縦横断測量の課題
定期縦横断測量成果は直接地形測量を行うため、高い精度の縦横断成果を得ることができます。しかし、
①測線間の堤防高が把握できないこと
②膨大な作業が必要であり、データの同時性に欠けること(場合により計測日数に数ヶ月を要する)
などの課題もあります。

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航空レーザ計測データを活用した堤防高評価


ここでは航空レーザ計測データを活用した堤防高の把握および評価を行う手法を提案します(図4)。
航空レーザ計測データの制度は、見通しの良い箇所でも±15cm程度であるため、定期縦横断測量成果と比較して劣ります。しかし航空レーザ計測では、日本の長い河川であっても数日で計測できるため、同時性を持ったデータで堤防高を把握することができ、しかも面的かつ定量的に評価できることから、定期縦横断測量成果と補完的な関係にあります。

■ 堤防高不足箇所の抽出方法
堤防高不足箇所は、各河川で定められている計画高水位(H.W.L.)と現況堤防高との差分を算出し、余裕高を確保しているか否かで評価します。評価イメージと抽出手順は以下に示すとおりです(図5)(図6)。

■ 航空レーザ計測データを利用する利点
航空レーザ計測データを利用することで、従来の平面図、縦横断図では把握できなかった堤防状況を、新たな視点から多面的に捉えることができます。

① 現況河川の多面的な評価
航空写真や赤色立体地図を利用することで、築堤や無堤区間、支川の流入状況など、現況の河川状況把握を視覚的に支援します(図7)。

② 計画高水位比高区分図の視覚化
計画高水位と航空レーザ計測成果との差分から比高区分図を作成することで、視覚的に評価することができます。この主題図は目的に応じて色調を変化させることできます(図7)。

③ 連続的かつ定量的な評価
定期縦横断測量は測線毎の評価でしたが、航空レーザ計測データを利用することで測線間の堤防高の変化も把握することができます。この連続的な評価により、これまでわからなかった測線間の堤防高不足箇所をスクリーニングすることができます(図8)。

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本手法の評価


今回の手法により、堤防高不足箇所を全川統一した基準で定量的に評価し整理することができます。堤防高が低い箇所は、洪水時の要注目箇所、今後の対策が必要となる箇所となります。
現地調査や測量の必要な箇所を絞り込むことで、事業の効率的な実施や今後の事業実施の優先順位検討のための基礎資料として、利用が期待されます。
またこれまでの実績として、河道改修の進捗状況把握や、課内の引き継ぎ資料として有効です

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今後の展開


堤防の高さの評価に留まらず、堤防の幅についても定量的に把握する手法を開発する予定です。これにより、堤防の高さと幅の両面から評価し、よりきめ細やかな成果の作成に努めます。
また一連の作業についてシステム化を検討し、費用面・工期面での効率的な作業実施を図ります。

平成16年より、国土交通省では全国一級河川109水系の直轄区間を対象に、航空レーザ計測を継続的に実施しています。このデータは現況の河川状況を定量的に評価するための基盤データとして重要です。
一方、航空レーザ計測データは、計測時点の地盤高を反映しており、計測時期から時間が経つにつれて土地利用状況や河道改修などが進み、現在の状況を反映し切れていない場合が生じます。
このような点に留意しつつ、航空レーザ計測データの新たな利活用場面として、航空レーザ計測成果を利用した河川の堤防高評価(スクリーニング手法)をご検討頂けると幸いです。

 

図7 航空レーザ計測成果と評価結果による主題図の作成事例

 

図8 堤防高評価結果と航空写真図の比較


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