澄 川 温 泉

酸性緑礬硫黄泉など 温度60-92度 99 l/min

永井登志樹著「秋田いで湯100泉」無明舎出版(1987発行)より

 


八幡平温泉郷のうち、オンドル式宿舎を併設しているのは大深、後生掛、澄川、赤川、銭川の5湯。この中で後生掛の6棟に次ぐ5棟の宿舎を持っているのが地熱で蒸ける温泉澄川温泉だ。

 温泉事務所のある本館旅館部を除いて、自炊部は全てオンドル式。最近新築した2階建て宿舎は、他の温泉のオンドル式客室に比べて設備がよいので、一般のハイカーでも抵抗なく利用できる。ただ高温から低温まで幅があるため、宿の人と相談して自分に適した温度の部屋を選ぶことが大切。普通の健康体の人ならあまり熱くない方がいいだろう。馴じみの湯治客は毎年同じ部屋を予約しておくそうだ。

 浴舎は離れて2棟あり、どちらも男女別。泉質は酸性の緑礬黄硫泉だが、5か所の源泉から別々に引湯しているため、成分が微妙に異なる。第1浴場は強酸性泉の「酸の湯」明礬を含んだ「鉄の湯」、それに別室になっている打たせの「滝の湯」(ここだけ混浴)の3浴槽。第2浴場はやや白濁した「硫黄の湯」透明な「石膏の湯」の2浴槽。それぞれ効能も違うので症状に応じて使い分けもできる。

 第1浴場の横から谷に下ると石で囲っただけの野性味あふれる露天風呂がある。泉質の異なる2つの浴槽があり、どちらも熱いので水でうすめてはいる。ただし谷底にあるので宿舎の方からは丸見え。隠れる場所がないので女性が入るにはちょっとした勇気が必要かも。

 また、豊富な温泉の熱蒸気を利用して、アミ袋に玉子や野菜などを入れて煮物ができる「蒸気煮物」や、ゼンソクに効果を発揮する「ゼンソク吸入蒸気」などがあるのも珍しい。

 宿舎の背後の小高い丘一帯は、かつての硫黄鉱山跡。丘の上の薬師神社から澄川温泉の全景を見渡せる。山並遙か向こうに望む大きな森吉山の姿も印象的。

 ここから大沼温泉までの山道は、有料道路ができる前までは後生掛温泉への近道として利用されていた。途中、小規模な泥火山を見て約30分で大沼のほとりに出る。八幡平の温泉をめぐるハイキングコースのひとつ。


 
 
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