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2014年防災の日特集

~ 土地のリスクをきちんと知ろう ~

   



2001(平成13)年に施行された「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」(土砂災害防止法)の 契機となった災害があります。


それは、「平成11年6月広島豪雨」災害です。



1999年6月29日15時から18時にかけて、広島市周辺の各地で豪雨によりがけ崩れ、山腹崩壊や土石流が多数発生しました。広島県災害対策本部が7月21日に


発表した資料によりますと、県内で死者31名、行方不明者1名、負傷者54名の甚大な被害となりました。広島市の中でも南西部の佐伯区から北東にかけての


安佐南区、安佐北区に被害が集中しました。


広島市西部の地形は、低地から丘陵地へは比較的穏やかな変化していますが、丘陵地から山地へはかなり急に変化しています。広島市の山地の地質は、中生代


白亜紀後期に生成された広島花崗岩と呼ばれる細粒から粗粒の黒雲母花崗岩からなります。この花崗岩は風化されやすい特徴を持っています。風化され砂状に


なったものはマサ土と呼ばれています。


このとき崩壊したマサ土の多くは流動化していました。これはマサ土の土質特性、すなわち多量の水分を含んで粒子同士がばらばらになりやすい性質による影響


が大きいと思われます。


  

「平成11年6月広島豪雨」住宅地を襲った土石流

(広島市佐伯区、1999年7月1日 アジア航測撮影)



「平成26年8月豪雨」被害状況(広島市可部東区、2014年8月21日アジア航測撮影画像より3D生成)



今年(平成26年)8月、広島市は再び集中豪雨による土石流に襲われました(平成26年8月豪雨)。


このように、自然災害は繰り返し発生します。



広島における近年の住宅地開発は著しく進み、海岸線の埋め立て以上に山間傾斜地での開発が目立ちます。一般に、山地や丘陵地が宅地や公共施設等に利用され


ることは少ないのですが、平地の少ない我が国では、おそらく20%程度の宅地や施設は、そうしたところに立地せざるを得ないのかもしれません。


山地・丘陵地での土地の安全性が問題になるのは、土砂災害です。土砂災害とは「崩壊(山崩れ、がけ崩れともいう)」、「土石流」や「地すべり」により発生


する災害のことです。「崩壊」は大雨や地震に伴って発生する場合が多く、土砂災害のなかで発生件数が最も多くなっています。



「崩壊」は、「地すべり」と違って非常に速いスピードで土砂が移動します。


「崩壊」には、斜面の表層部分が崩壊する「表層崩壊」や深部の岩盤まで崩壊する「深層崩壊」などの種類があります。このうち、「表層崩壊」は斜面表層の


風化部1~2m程度の厚さの崩壊です。表層崩壊は発生数が多く、豪雨時に発生した土砂が集まって土石流となり下流平地まで流下しやすいため、人家への影響が


大きくなります。



「地すべり」と「土石流」の発生危険性のある場所は比較的特定しやすいですが、「崩壊」の発生の可能性のある場所の特定は困難な場合が多いです。しかし、


豪雨時に発生した表層崩壊の分布状況をみると、その発生位置には特徴があり、約90%は山腹の傾斜の変わり目付近かそれより下部の斜面で起きています。


2010年の「平成22年7月広島県豪雨」の際も、梅雨前線に伴う豪雨により、広島県庄原市を中心とした地域では崩壊・土石流が多数発生しました(下図)



「平成22年7月広島豪雨」災害の立体オルソ画像

(広島県庄原市先大戸地区から県道中迫川北線の範囲。表層崩壊部が判読しやすいように色補正を加えています。)

 

2001年に施行された土砂災害防止法により、都道府県は国の指針に基づき、土石流、地すべり及び急傾斜地の崩壊などのおそれがある土地について、地形、


地質、降水などの状況や土地利用状況などの調査を行い、土砂災害のおそれがある区域(通称:イエローゾーン)を土砂災害警戒区域として指定します。


そのうち、建築物に損壊が生じ、住民等の生命又は身体に著しい危害が生じるおそれのある区域(通称:レッドゾーン)を土砂災害特別警戒区域として指定


します。レッドゾーンに指定されると、特定開発行為に対する許可制、建築物の構造規制、移転勧告、宅地建物取引における措置が行われます。


 

市町村は、地域防災計画に基づいて区域ごとの特色を踏まえた土砂災害に関する情報伝達、土砂災害のおそれがある場合の避難地に必要な情報を住民に周知


させるため、これらの事項を記載したハザードマップ等の配布、その他必要な措置を講じることになっています。


 

また、すでに居住していて、今後もこのようなところに住まざるを得ない場合には、土砂災害ハザードマップや土石流危険渓流であることを示す看板等により、


その地点の安全度(危険度)をよく認識したうえで住むこと、といったような指針が示されています。すなわち、その地点が集中豪雨時には危険状態になりうる


ことを十分に承知したうえで、それ相応の覚悟を持って住み、豪雨が続いたら、天気予報などを参考に自発的もしくは行政の警戒避難指示に従って、すみやかに


安全な場所に避難することが大切だということです。

 

 

 

各都道府県が公開している土砂災害危険箇所と土砂災害警戒区域は、国土交通省のホームページ(http://www.mlit.go.jp/river/sabo/link_dosya_kiken.html


で調べることができます。また、自治体が公開している各種ハザードマップは、国土交通省ハザードマップポータルサイト


http://disapotal.gsi.go.jp/bousaimap/ )から調べることができます。

 

 

 

<引用・参考文献>

 

今村遼平(2013):安全な土地,東京書籍,p200

日本写真測量学会2012:空間情報による災害の記録 伊勢湾台風から東日本大震災まで,鹿島出版会,p317



 
 
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