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みなさん、こんにちは。千葉達朗です。
赤色立体地図のセカイへようこそ。
地形から、防災と過去・ミライを考えます。地球科学に関することなら何でもござれ。
今回のテーマは「西之島」です。


赤色立体地図を始めてみる人の顔には、たいてい「キモチワルイ」と書いてある。

赤色立体地図という名称が定着していないころは、「内臓マップ」と呼んでいた。
昨年末、月探査機・かぐやの観測結果をもとに作った月の赤色立体地図を国土地理院が発表したときもキモチワルイと2ちゃんねるで話題になった。

右の図は噴火により新たに形成された島と一体化した小笠原諸島西之島。
赤色立体地図で差分の可視化を試行したもの。

溶岩流が下流に行くに従い枝分かれをするのがよくわかる。
まるで浮き出た血管のなかで血液が動いているようだ。
西之島


西之島
赤色立体地図による4時期比較
国土地理院で公開中の標高データを用いて作成
(クリックすると拡大します)


2013年11月20日ごろ、小笠原諸島西之島付近で噴火が確認された。それにより新たな島が出現し、その後も噴火が継続、溶岩流が流下した。新島の北側に延びた溶岩流は西之島と接続してついに一体化した。

溶岩流の地形は非常に複雑で、陰影段彩図では全容を把握しにくいと感じたので、 火山地形研究のために、地理院の公開データを使用して、赤色立体地図を自分でつくってみた。
作っているうちに4時期になったので、座標をずらしてDEMを結合し、まとめてみた。
じぶんの「ある火山学者のひとりごと」のページやFacebookに流したが、その反響もあり、 国土地理院のサイトで公開していただき、朝日新聞デジタルでも掲載していただいた。





この赤色立体地図をみると、次のようなことがわかる。

・溶岩流は、下流に行くに従い枝分かれをする
・先端のほうが急傾斜
・溶岩堤防はだんだんはっきりしなくなってきた
・伊豆の大室山とシャボテン公園のある高まりの関係と似ている
・南側が火砕丘(大室山)、北側にある盛り上がりは溶岩噴出丘(シャボテン公園)のように見える


3Dで回るように設定してみた
(google chrome 等のwebGL対応のブラウザを使用してください)
噴出中心は、南側の火砕丘である。ここは、最初、水蒸気爆発を繰り返していた地点で、全くといってもいいほど移動していない。
北側にあるもう一つの高まりは、溶岩をサイホン的に噴出する溶岩塚だったが、側火口に成長してきた。
溶岩流の枝の中央部に流れと平行する、長い割れ目が発達する。
溶岩表面の高度は4mくらい高くなったにもかかわらず、位置はほとんど変わらない。
おそらく、溶岩の表面の亀裂の下には溶岩トンネルがあると思われる。



火山が噴火すると、火山からの噴出物が原因となって、さまざまな火山災害が発生する。
代表的な火山災害は、溶岩流、火砕流、噴石、土石流と泥流、火山灰である。

溶岩は、地上に出たマグマだ。1000℃前後の高温の溶岩が、低い場所に流れていくのが溶岩流で、そのスピードは地形や粘性によっても異なるが、ほとんどは人が走れば逃げられる。
溶岩流が枝分かれするのは、表面が固まっても内部は熱くて流れが続き、固まった溶岩の先端を次々に突き破るように広がっていくためだ。
溶岩流はやがて冷えて固まり、以前の地面を覆い隠し、新たな地形をつくりだす。 西之島では枝分かれしながら海を埋め立てている。

日本の陸地面積の約3分の1は、火山性の岩石でできている。かくも日本の地形は火山と切っても切れない関係である。

噴火継続中の火山で、こんなに頻繁にDEMが計測されたのは世界唯一、世界初なのではないか。
技術の進歩がひとびとの安全にやくだつことを願っている。

関連リンク

TBS 夢の扉+ 公式サイト

赤色立体地図 (Red Relief Image Map)|事業・製品情報|アジア航測株式会社

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