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7.海外事業とGIS(S40~S58)

海外事業の展開


アジア航測の海外事業は、昭和40年(1965)に社員の野添茂樹をアフリカのガーナに派遣して、農地開拓計画のための地上測量を行ったのが最初でした。

 

昭和45年(1970)には、弊社は海外事業の担当部署を設けました。その年、インドネシアのブル島の森林測量、日本政府関係のOTCA(海外技術協力事業団)が行ったスラウェシ島(セレベス島)の調査やOADF(海外農業開発財団)のインドネシア森林調査に参加しました。

 海外での事業は、相手国政府の承認などを得るうえで、現地企業との提携や合弁が有利になるため、海外企業との協力体制も整えていきました。昭和46年(1971)には、弊社と地元企業等との間で業務提携が結ばれ、インドネシア全域でのプロジェクトに関わるようになりました。

 インドネシアでの活動は、単に測量や資源開発関係の業務にとどまらず、国家間レベルの技術協力に弊社が大きな役割を果たしています。

 

インドネシア以外でも、バングラディッシュのジャムナ架橋プロジェクトなど、海外事業に携わっています。昭和45年(1970)に世界最大の物理探査会社と業務提携を結び、資源開発調査分野への海外進出を図った他、マレーシア、フィリピン、韓国、サウジアラビア、クウェート、パナマ、アメリカ、カナダ、中国、台湾などの企業とも業務提携を行いました。

 
                                                           
 

インドネシア国土基本図(バリト河地形図)贈呈式(昭和49年)


 

海外で萌芽した弊社のGIS技術


昭和51年(1976)4月、弊社は初の海外大型プロジェクトとして、クウェート全土の航空写真測量を国際入札により落札しました。その後、クウェート市庁に対し、地下埋設物の図面作成の提案を行いました。この提案は、施設図面のデジタル化からデータ管理システムの構築までの大規模プロジェクトに発展しました。

 

略称KUDAMSと呼んでいた「クウェート公共施設データ管理システム(Kuwait Utility Data Management System)」は、地上及び地下の施設図及び付属情報をコンピュータで管理し、必要なときに呼び出して画面上で追加入力や修正ができるようにするものでした。弊社は、他の日本企業とともにアジア・コンソーシアム共同企業体で国際入札に臨み、昭和58年(1983)3月に落札、クウェート市庁と「KUDAMSプロジェクト」の調印をしました。クウェート当局の意気込みは相当なもので、契約調印に関するニュースが大々的に報じられました。

当プロジェクトは規模の大きさだけでなく、技術上でも初めての分野への挑戦が連続しました。特に測量業界のこれからを指向する最先端GISであり、世界初の本格的な施設管理システムとして、国際学会や実業界から高い評価を得ました。

 

しかしながら、KUDAMSプロジェクトは結果的に大損失となってしまいました。原因は外貨建てで締結した契約の為替差損と、仕様書の内容の認識の齟齬でした。

当時の社長の青木利夫は社長就任前から何度も現地に足を運び交渉し、仕様書のひとつひとつを洗い出して具体的に実施事項を取り決め、契約変更の調印手続を経て、ようやく平成2(1990)年7月に全作業を終了しました。

 

弊社はこのプロジェクトで大きな損失を被りましたが、この結果、弊社は米国のインターグラフ社のマッピングシステムを厚木技術所に導入し、デジタルマッピングの大量生産のシステムを確立しました。また、当プロジェクトで蓄積した技術や経験は、その後の国内でのデジタルマッピング、都市情報管理システム(UDAMS)ならびにALANDIS(Asia Land Information System:平成7年~)などの現在のGIS開発の基盤技術となったのです。

 

 

  都市情報管理システム(UDAMS,昭和59年・1984年)