アジア航測|空間情報コンサルタント

 
HOME災害情報関連一覧 > 2003年7月宝川内土石流災害
2003年7月宝川内土石流災害
2003年7月宝川内土石流災害
航空機レーザ計測
(2003年7月30日作成 8月5日修正 vre 2.3)

 水俣市宝川内(ほうがわち)土石流災害では、住民から多くの犠牲者が出ました。このような土石流の発生機構を検討するためには、現地調査や崩壊土砂量の計測が不可欠です。そのためには、発生直後の詳細な地形データが、基礎資料として重要となります。
 弊社では、7月25日に宝川内土石流について、幅1100m長さ2700mの範囲について、航空機レーザ計測を実施し、高精度1mDEMデータをを取得いたしました。緊急で作業を行いましたので、樹木データの除去作業は、一部不十分な地点もありますが、取り急ぎ公開いたします。防災のための調査研究にご活用ください。

・8.1 鳥瞰図追加、高解像度画像追加
・8.4 ファイルサイズの適正化
・8.5 オルソ画像の差し替え、オルソ立体画像掲載
レーザーバードのページへ(測定原理など)

 

 

■1mDEMデータの表現手法と、土石流の範囲の認定

いずれの画像も1530×2970pixels(1ピクセル=0.5m)です

 航空レーザ計測により、森林地帯でも樹木の影響を取り除いた精度の高い地形データが取得できるようになった。しかし、そのデータは膨大で、これまでの地形図のように等高線をDEMから発生させる表現では力不足である。もともと平坦部や急斜面は等高線の苦手とするところであった。(これまでは手作業で崖記号や窪地のハッチをいれることで補完してきた)。
 そこで、DEM データの可視化手法として従来より、陰影図や傾斜区分図、斜面方位区分図などが作成されてきた。陰影図には、方向依存性があったり反対側から見ると反転して見えるという問題があった。傾斜区分図は尾根部と谷部の区別がなされていないという問題があった。さらに、立体感を得るためには、2枚の図を使用したり、様々なフィルタを用いることが多く、広い範囲を一度にどの方向から見てもという方法は存在しなかった。
 以下に紹介する「赤色立体地図」*1は、アジア航測で開発した新しい地形表現手法で、オルソ画像1枚で安定した立体感を生じさせるもので、現在特許出願中である。レーザ計測による詳細なDEMデータの細部にいたるまで余すことなく表現することが可能である。
 基本的には、傾斜の大きいところほどより赤く、平坦なところほどより白く、尾根や独立峰ほどより明るく、谷や窪地の部分ほどより暗くなるように調整した画像である。以下に、いくつかの作成事例を紹介する。

 なお、ここに示した滑落崖および崩壊地、土石流通過範囲および堆積範囲は、作成したオルソ画像を地形図や赤色立体地図に重ね合わせて作成したものである。特に谷の上を覆う樹木の部分のとりこぼしや、土石流通過範囲の脇に形成された、小規模崩壊等も含んでいる場合があるかもしれない。現地調査による検討を踏まえたものではないことに注意が必要である。

 

 ■従来のデータ表現手法によるもの
図1■1m間隔等高線図 図2■陰影図 図3■傾斜区分図
     
■赤色立体画像のバリエーション
図4■赤色立体地図 図5■赤色立体地図(色相付加) 図6■赤色立体地図(反転)
     
■等高線図や赤色立体画像、オルソ画像と分布図の重ね合わせ
図7■1m間隔等高線図+分布図 図8■赤色立体地図(青黄色付加)+分布図 図9■赤色立体地図(反転)+分布図
図10■赤色立体地図+1m間隔等高線図+分布図 図11■赤色立体地図(青黄色付加)+1m間隔等高線図+分布図 図12■オルソ画像

 

 

  ■地形断面図

図13■ 断面位置図

次ページの画像上の、断面線をクリックすると、断面図を表示します

図14 赤色立体鳥瞰図その1

青い線は断面図の位置を示す

図15 赤色立体鳥瞰図その2

青い線は断面図の位置を示す

図16 赤色立体鳥瞰図その3

黄色着色範囲は土石流のおおよその位置を示す

図17 オルソ鳥瞰図その1

崩壊土砂が、斜面に乗り上げながら下っていた様子が分かる。

図18 オルソ鳥瞰図その2

崩壊地から氾濫堆積地点までの全体の様子がわかる。
 

図19 オルソ立体画像部分拡大

立体感の消失したオルソ画像に、赤色立体地図を合成し、オルソ立体画像としたもの。土石流通過域の谷の中の微地形がよくわかる。3つの治山ダムも確認できる。
 
Copyright (c) 2003 by Asia Air Survey co., ltd.
本ページに掲載した画像や図の無断転載を禁じます。

*1)赤色立体地図 特4272147,3670274 「傾斜赤色化立体画像」
文献:千葉達朗・沼田洋一(2003)赤色立体地図,写真測量とリモートセンシング,42,4

 

<< 九州豪雨土砂災害のページに戻る

 
< 防災関連情報トップへ ▲ページトップへ